〜イギリス エディンバラ・フェスティバル「西太后」劇評より


西太后
ランドルフ・スタジオ
ダンス★★★


日本のモダンダンス舞踏家Etoko Sakaguchiと数人の女性ダンサーは、
ランドルフ・スタジオの郵便切手サイズ(非常に小さな)舞台で非常に計算された良い演技を行った。
彼女の1時間公演の「西太后」は、プログラムによると
"世界の歴史上最も無慈悲な女性"といわれた19世紀の皇后の名から命名されている。
この女性の性格の本質についてEtokoの演出は、
帝国の中国と同じほどMTVとラスベガスに負うところが大きい。
バレエと舞踏をすこしプラスした自由なジャズダンスは軽快で、新鮮でモダンである。

Etokoは40代後半にしてはメロドラマ的で、思わずつり込まれる演技者である。
西太后の持つ権力への渇望と傷ついた精神を表現するために、
彼女はいたづらっぽい微笑み、流し目、Dragan Ladyの指の爪そして悪魔の笑いを用いて、
登場人物の狡猾な精神的堕落を伝える。
ショウが最高潮に達すると、彼女の会は激しい破滅の表情を見せ、
彼女の体勢はより黙示的に熱狂してくる。
我々よりも彼女のほうがカタルシス(死ぬ時の快感)に落ちいっているような演技である。


Etokoのバックアップ・ダンサーは、死にもの狂いにリハーサルしたに違いなく、
非常によく訓練されている。しかし惜しいことに、
ビート、ユニゾンダンスは誇張されたロックミュージックテープをバックに
ほとんど独創性がなく、機械的で単調である。
心に打たれなかったが、ともかく印象的な日本の体験である。

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「STAGE」 4 SEPT.97掲載

西太后はThe Empress Doeager Cixiの日本語である。
1861年から1907年まで、中国を残忍に支配し、その結果、政治の崩壊を招いた。
日本のEtoko Sakaguchiは、この残忍孤独で、しまいには悲しみで押し潰されそうになった人物の役を
力強く、生き生きと踊っている。
色鮮やかな衣装のオープニングと最後のCrowningの儀式は別として、
彼女の振付は中国宮廷の荘厳な動きを思い起こさせようとしたものではない。
むしろ彼女は、妥協することのない現代の表現(主にモダンやジャズのスタイル)を選んでいる。
Mitsuo Ishiiの大音響のロックとポップのサウンド・コラージュに合わせ、
彼女を見事にささえるEtoko Dance Companyの4人の女性ダンサーにより、
Sakaguchiは、ステージを精力的に残忍に支配している。
その力強く驚くほどエネルギッシュなパフォーマンスは、顔の表情と身体の動き(歌舞伎を思い起こさせる
獅子神楽と中国獅子踊り)を印象的に結びつけている。


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