●多磨墓地での出来事 (2008年7月)
この前日本に帰ったときの出来事。
日本の実家は多磨墓地のそば。
家の近くにお気に入りのラーメン屋があって、
帰るたびに高校の頃の友達と行くのだが、
今回はお互いなかなか時間がなく
自分で行かなきゃ今回は行けそうにないという事で、
ある夜自転車で一人で行く事に。
そこに行くには多磨墓地を突っ切っていくのが一番の近道なので
何の迷いもなくその経路で行く事に。
夜で暗いせいもあり道順の記憶も定かではなく、
人と携帯で話しながら墓地に侵入。
あれ、こんなに暗かったっけ?と思いつつ話しながら進む。
そして電話を切ったとたんに自分が墓地のまっただ中にいるという認識が、、、
怖い。
とにかく街灯が全くなく、自転車の明かり以外何もない。
しかも道もよくわからない。
ここで何かが近づいてきたら間違いなくちびるだろう。
いや、たとえちびらなかったとしても軽くうんこくらいはもらすだろう。
近くにありながらもう15年以上もここに来た事がないので、
確か中央の道一本でいけると思っていたのが、
入った場所から違っていたのか何度かロータリーに遭遇し、
その度にどっちに曲がるか選択しながらの恐怖のサイクリング。
もう既に入り口からも出口からもほど遠い。
本当に真っ暗闇。
こんな怖い経験は今までした事がない。
何か楽しい事を考えなきゃ!と思いあれこれ思索。
ガッツ石松のストレート長髪にTバック!
だめだ。よけい怖い。
さだまさしの歌う宇宙戦艦ヤマトのテーマ!
なんだかさらに怖くなってきた。
体がクレヨンしんちゃんで顔がケンシロウ。
しかもふりちん。
そして台詞が「みさえはすでに死んでるんだぞー あた。」
もうだめだ。早くこの場所から脱出せねば立ち直れない。
汗をたらしてスピードを上げる。 出口が見えた! そして脱出!
なんとか無事通り抜けたがどうやら横の方に出てしまったようだ。
そのまま墓地を迂回し目的地であるラーメン屋へ。
ああ。やっとついた。
このためにこんなに苦労したんだ。
さあ入るぞ!
....閉まってる。 月曜定休日。
一体あの苦労は何だったのか?
頭の中ではステージでさだまさしが宇宙戦艦ヤマトを歌っている。
それにあわせて長髪Tバックのガッツが腰をくねくねして踊っている。
ケンシロウがみさえの肛門の秘孔を突いている。
まさにこの世の地獄。
ここにいてもしょうがないので引き返す事に。
さて、また墓地の入り口にとまりちょっと思案。
考えてみるとこんな怖い思いなんか体験した事がない。
仕事柄お化け屋敷なんかにいってもホラー映画を見てもこんなに怖いと思う事はない。
もしかしたらこれって貴重な体験?
ホラー映画を作る者として怖さの正体という物を知りたくなりもう一度墓地を突っ切っていく事に。
中で迷いたくないので入り口の地図をきっちり確認。
脳に焼き付ける。
すると後ろの方からがやがやと人の声が!
ギクリとして振り向くと高校生くらいの若者が3人自転車で墓地に入ってきた。
そしてこえーーーー!と叫びつつちょっと入って引き返していった。
おいおい。君たちは3人じゃないか。
こっちのがこえーよ。
そしてふとあたりを見るとタクシーが2台ほどとまっている。
中に車は入れないので、おそらく中にいる人を待っているのだろうけど、
それってこんな真っ暗な中に人がいるってこと?
それが歩いてるのを見たらめっちゃ怖いんじゃない?
遭遇したらどうしよう?
と不安を感じつつ勇気を出してペダルをこぐ。
中を進みあれこれ想像する。
ここでこんなのがこう出てきたら怖いぞ、とか
あそこにあんなのが見えたら怖いぞ、とか。
そういう事を考えているとなんか全く怖くなくなってしまった。
状況が変わらないのにである。
そこでふと恐怖とは与えられるものではなく(まあそういう恐怖もあるが)
自分で作ってるもんだという事に気づいた。
それを体感したのである。
それから自転車のライトを消して見たらなんとよけい怖くなくなった。
光と影の対比というやつであろうか?
光があるから影がよけいに怖くなるので、影だけだったら逆に怖くなくなってしまうのである。
これは大きな発見だった。
今後いろいろな事に生かせそうだ。
そして冷静に墓地を脱出。
何とも貴重な経験をしてしまったのである。
そして晩ご飯はセブンイレブンで買ったカップスター。
寂しい。
ESSEY 目次に戻る→
|