初ダミー (2008年7月)

今回は自分の初めてのいわゆるSFX Make-upの経験を書こうと思う。  
高校のとき自分は演劇部に所属していて、
2年生のときの定期公演で自分の役が、

スーパーマンの格好をして、
お父さんと呼ぶ等身大のダミーと一緒に空を飛ぶ事を夢見る
誇大妄想狂の変態のキャラ(本当)で、


そのお父さん人形の制作をする事になったのである。
そのとき既に今のこの仕事をしようと思っていた訳ではないが、
こういう仕事の存在は知っていたので、
よっしゃ、やってみっかという事で始めました。

まずとりあえず家に”お面の作り方”という本があったので、
それを参考にする事に。
板の上に顔を粘度で造形し、
その上にちぎった和紙をボンドをつけながら重ねていき、
それが乾いたら粘土から外して出来上がりという単純なものであった。
へたくそながらも前半分の顔がなんとか出来上がり、
同じ要領で頭の後ろも作り、二つをつなげて頭部の完成。
紙なので、色も確かただの絵の具かなんかで塗ったと思う。  
それから体の制作。
人からもらった古着のなかに、肩から足までの長さの棒を2本突っ込み、
あとは適当にスポンジをきって服の中に詰め込んだだけの単純なもの。
なんとか人の形はキープできたが直立不動で手もついてない。
まあ設定があからさまな人形という事なので、
これでいいだろうと自分にいい聞かせつつなんとか完成。
しかしその直後に思いもよらなかった大問題が自分を襲うのである。 
そんな事を知らずに高校二年の青二才の自分は
満足げにダミーを眺めてしばしの達成感に浸っていた。
そしてそのさなかに恐ろしい事に気づいてしまったのである。




どうやって学校に持っていこう?




そう。ここは自分の家。
作ったものを学校まで持っていかなければならないのである。
その当時、自分の通学手段は電車か自転車。
通勤通学ラッシュの中、親父人形を抱えてその中に飛び込むなんて事はできない。
女装して乗るのと同じ位恥ずかしいと思う。
その恥ずかしさが快感になるのだろうけど、
高校生のうぶな私にはまだその経験はなかった、、、 
残る手段は自転車。
しかし等身大の人形をどうやってのせよう?
試行錯誤の結果、なんとかそれが可能な姿勢を発見。
図解するとこう。











こ、これは電人ザボーガー!!




子供の頃に夢中になったヒーローに自分もなれた!!
とりあえず急遽そのときだけおやじんザボーガーとこれを名付けた。  
しかし当然これでもかなり恥ずかしいので、
その日はいつもよりかなり早く出る事に。  
行け! おやじんザボーガー! 
気合いを入れて肌寒い冬の朝、いざ出動したのであった。
そしてすぐにある事に気づいた。 




親父が邪魔でハンドルがきれない。  




そう。親父がしっかりハンドルの上に乗ってるのでハンドルを曲げられないのである。
普通の運転ではカーブは曲がれないのである。
方法はただ一つ。親父とともに自転車を傾けて曲がるのだ。
図解するとこうだ! 



肌寒い冬のきれいに晴れた青空の下。
風を切りながら感じる自転車と親父との一体感。
ああ、今僕は親父と一体になっているんだ! 
ああ、もう少し、もう少しこのままで。 おやじーーーーー!
気がつくともうそこは学校。 無事にたどり着いたのでした。

今から思うとこれが今の仕事の第一号なんだろうな。
残念ながら写真をぜんぜんとってなかったので見せる事はできないが。
質はひどいけど、あの頃の面白いものを作りたいという気持ちは
大切にしたいと思う今日この頃である。


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