●エミー賞受賞

1999年のある雨の朝。
ふと外に出てみると玄関になにやら郵便物が。
何か書類のような物がはいっているようである。
おもむろに拾い上げ中を開けてみると中身はなんとエミー賞受賞の証明書が。
授賞式に行かずにこんなモンもらえるとは、
ノミネートされてたのも知らなかったのにとおもいつつ読んでみると、
どうやらX-Fileの仕事でとったらしい。
(ちなみにエミー賞とは、TVの作品に送られる、いわゆるテレビ版のアカデミー賞みたいなもの)
エピソードのタイトルを見ると、
そこには ”Two Fathers/ One Son”と。
いったいどのエピソードなんだろう。
覚えていない。
それどころかX-Fileを一年近く仕事したにもかかわらず
一度も見たことが無いのである。
そんな人がこんな物をもらってもいいのだろうかとおもいいつつ、
くれるモンは病気以外だったら何でももらう事をモットーにしている私としては、
とりあえず部屋の飾りにもらって置く事にした。
ここで少し、アメリカの特殊メイクの仕事の仕組みという物を説明しておきたい。
アカデミー賞とかエミー賞とかを実際に授賞式にいって表彰されて
トロフィーとかをもらえるのは、
実際に現場に行って役者にメイクを施した人。
これは大概ユニオンメイクアップアーティストといって、
メイクの組合に入っているものだけである。
ハリウッドではこの組合の規制がうるさくて、
ユニオンじゃない人は、それまでの準備をすべてやっても
現場でメイクをさせてくれない事が実に多いのである。
いわゆる特殊メイクと呼ばれるものは、
まず役者の顔の型を取り、
それをもとに変形した顔や老人の顔や怪物の顔などを粘土で造形し、
さらにそれから型を取り薬品を流し込むといったような色々なプロセスをえて、
最終的に出来たものを撮影当日役者に貼るといったものである。
したがってそれを作るものにメイクの組合の人がいないと、
当日役者に貼る仕事だけは誰か組合の人に頼まなければいけないことになってしまうのである。
実際こういうので表彰される人は、
作る方の苦労は特にしなく当日貼るだけの人がほとんどなのが現状である。
自分自身はユニオンには入っておらずメイクも全然興味ないので、
こういうものとは無縁だと思っていただけに、
くれたときは少し意外でした。
まあたまたまやっていた仕事がたまたま受賞したという感じで
たいした価値があるわけではないが、
やはり少しうれしいものである。
●新聞に載った日


なんとこっちの新聞に載ってしまいました。
自分が彫刻を教えている学校で純粋芸術の運動を推進していて、
そこであるイベントをする事になり、
そのことに関する取材をある新聞社から受けて
それがなんと表紙に載ってしまったのである。
書いてある内容は、
この学校でこんなイベントをやっていますよーっといったようなたあいもない内容であるが、
よっぽど平和で事件も何も無かったのであろう。
セブンイレブンでその新聞が買えるので
その日に行ってみて探してみると、
なんと何もめくらずにべーんとそこに自分の顔が下まで並んでいるではありませんか。
新聞に載るとは聞いていても
他の人もいっぱい写真を撮られていたのに、
まさか自分のアップが、しかも表紙で。
動揺した手は思わず10冊ほどの新聞を握り締めてふらふらとレジへ向かうのであった。
レジの兄ちゃんがそれを見て、
これあんたかと聞いてきておもわずにっこり。
心の中ではサインは勘弁してくれとさっっそうと答える準備をしていたが、
そんな事を聞かれるはずも無く、
行き詰まった心の叫びを
きゅうちゃんの”上を向いてあるこう”のメロディーで満たしながら
すごすごと家に戻った、ある穏やかな春の日であった。
ESSEY 目次に戻る→
|