初の型取り (2008年7月)

自分の初めてのライフキャスト(顔の型取り)の経験は高校3年の時。 
そのとき既にこの仕事をしようと決めていたので、練習のために経験する事に。 
当時持っていた資料が、特殊メイクの世界という本。 
それにライフキャストのやり方が簡単に、本当に簡単に載っていたので、
それをもとにまず材料を集める事に。 
当時はおそらくそういう素材の店もなく、
アリジネイトとプラスターバンデージと言ってもどこで手に入れたらいいかもわからなかったが、
たまたまバイト先の先輩で、歯科技工士の専門学校に行ってる人がいて、
アリジネイトは本来歯の型を取るものなので、彼にお願いして売ってもらいそれはクリアー。 
そしてプラスターバンデージであるが、解説にはギブス用の石膏包帯と書いてあったので、
とりあえず近所の接骨院を訪ねてそこで聞いてみたら、
そこにはあったが売る事はできないとの事なので、入手先を教わる。 
という事で外科の問屋を訪ねてそこでなんとかプラスターバンデージも入手。 
材料を揃えるのも一苦労である。  

さて、犠牲者は、いや型取り相手は当然自分の友人。
やり方は、見た事もやった事もないので、椅子に座って型が取れるなんて想像もつかなく、
とりあえずベッドにビニールを敷いて、そこに寝てもらった。
メイク屋で買ったはげづらをかぶせていざアリジネイトを水で溶いて顔に塗りだす。
どうやら水が多すぎたのか、加減がわかる訳もなくあれよあれよで鼻も口も塞がってしまった。
このままでは友人が死んでしまう。
でも芸術のために死ねるのなら芸術家の本望。
でも彼はただの学生なので生かしてあげる事を選択。
口の回りのアリジネイトを拭い取り、口を開けさせなんとか気道を確保。
一命を取り留めたのであった。
型取りも実に命がけである。 

なんとかアリジネイトが無事に固まり、いよいよプラスターバンデージの出番。
本によるとプラスターバンデージを水に浸し、アリジネイトの上に重ねていくとあったので、
その通り浸して重ねていく。 
しかしいくら重ねても固くならない。 
結構長い事待ってみたが、それでも固まらない。 
その間友人はゼスチャーで寒いと訴える。
上半身裸で寝ているので寒くなったようだ。
自分は手が汚れているので隣の部屋の姉を呼び、入ってきたとたん固まる。
知らない男が白い布のようなものをかぶせられ上半身裸で横たわっているのだから。
何か見てはいけない物を見てしまったとつぶやきながら毛布を渡してくれた。
ちなみにこれが友人と姉との最初の出会いであった。 

さらに待つ事20分。
いっこうに固まる様子はない。
仕方ないのでちょっと外してみるかという事で、顔から外したとたんにぐにゃり。
型がつぶれてしまった。
何がいけないのか?
あれこれ悩んだ末に、
なにげにプラスターバンデージを水で濡らしてこすってみたらなんと固まるではないか!!
本にはそんな事は書いてなかったが。
そう、、、人生17年。 自分にかけていたものはこすりだったのだ。

たりらりらー。
ぴろぴろはレベル2になった。
こすりのちからを手に入れた!
 

というわけで、今度は自信を持って2度目の挑戦。
またアリジネイトを顔に塗る。
また気道が塞がる。
また一瞬の迷いの後、口からの気道を確保。
無事アリジネイトが固まる。 

さてここからが新展開。
プラスターバンデージを水に浸し、顔に乗せこする。
またのせてこする。 
またのせてこする。
またのせてこする。

略して、まのこる。

数十回まのこった後プラスターバンデージを拳で軽く叩くとコンコンと音が。
今度は固い。
念のため5分ほど待ち、いよいよ外してみる。
いい感じ。
外れていく。
外れた!
形が崩れない。
その瞬間友人とともにうおーーーーーーっと思わず叫び声をあげてしまった。
そしてその中に石膏を流し込み、無事ライフキャストが出来上がったのである。
楽しい思い出である。



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