人類のDNA〜その2〜 (2011年9月)

まきぐそうんちの形は、人生経験の浅い5歳児が見てもうんちと認識するのか? 
おそらくその若さでまきぐそうんちを見た事ある子供というのは相当まれであろう。
私ははやる心を抑えつつ、5歳の娘の前に、


これナーンだ?


と右手を差し出す。
普通の親なら子供を喜ばせようと、
おやつや小さいおもちゃでも差し出すものだろう。 
しかし私にはそんな事よりも大切な、、、 


人類とうんちの遺伝子レベルでの関連性の解明という重大な使命が、、、 


これほど大切な使命を今まで家に持ち込んだ事があっただろうか? 
私は全人類の夢と期待を込めた右手をそっと開いた。
娘は手の中の汗ばんだ赤茶色の物体をじっと眺めると
一言つぶやく。

















粘土。
















冷たい答えが心に突き刺さる。 







ゴングが鳴ると同時にいきなりストレートを食らった。そんな心境だ。







そんな、、、そんな事はわかっている。
でも、、、でも、、、 違うでしょ。 こういう場合は! 
自分の質問の仕方が悪かったのだろうか?
もう一回わかりやすく聞き直すとしよう。





この粘土の形、何に見える? 





娘は自分の手の上の粘土をじっと眺める。
これで娘がうんちと答えれば うんち=DNA の理論が証明される。
私の頭の中でうんちコールがこだまする。


う、ん、ち ♪  う、ん、ち ♪ 


頭の中で軽快なリズムに合わせてうんち達が踊っている。
全身にうんちを感じ、思わず我を忘れる。
もう私の中ではうんちという答え意外何も考えられない。
私の期待はすでに確信に変わっている。 


さあ。 もう何もかも解っているよ。


でも一応答えを言ってごらん。   


































へび、、、 
















な、、、 なにを、、、? へび? そんな、、、 そんな馬鹿な、、、
この色、このまき具合、誰がどう見てもこれはうんちじゃないか? 
ストレートのすぐ後にアッパーカットを食らってノックダウン。 
全身の力が抜けていくのを感じる。 
私はその場にがっくりと崩れ落ちた。




私の、、、私の理論が間違っていた、、、 







まきぐそうんちはDNAには組み込まれていない。







後から擦り込まれた物だったんだ。 
ノーベル賞の夢がガラガラと足下から崩れていく。
もうだめだ。 
これ以上この現実に耐えられそうもない。 
荷物をまとめて日本に引き上げよう。 
オバマさん、お世話になりました。








しかしその時、ある疑問が頭をよぎった。 








Dr.スランプがないここアメリカで育つ子供達は
何を見てこの形をうんちと思う様になるのか?
私は新たにわき起こった疑問を解こうと調べてみる事にした。



調べる事2分。



突如目の前に現れた画像に私は自分の眼を疑った。








こ、、、これは、、、 









私は夢を見ているのか、、、?











こんな事が、こんな事が現実にあるのか? 










体の震えが止まらない。
皆さんごめんなさい。
私はまだまだ世間知らずの坊やです。
明日から山にこもってイチから修行し直す事にします。




















































注)フランスの版画家、ベルナール ピカール(1673-1763)の作品 タイトル”調香師”


ここはアメリカではないけど同じ白人文化。 


日本でいう江戸期前半に既にヨーロッパではまきぐそは存在していた!  


さらに調べていくと、また新たな発見が。






















































何とこれは天下の大英博物館での写真だそうだ。


イギリス女め。


すっとぼけやがって。


ちゃんと故郷にこんな立派なもんがあるじゃないか! 


明日会ったらおぼえてろよ!






だんだん自分が何を調べていたのかわからなくなってきた。






もう寝よう。






次の日私は仕事場で、イギリス女にこの写真を突きつけた。 


ほれ。お前の国にも立派なまきぐそがあるじゃねえかよ。 
しらをきってもすべてお見通しなんだよ。


彼女は写真を凝視する。
決定的な証拠を突きつけられてもう逃げられないと観念したのか、
がっくりとうなだれた。 
そしてぽつりと一言。

























I'm sorry...


















勝った。 



ついに私は勝ったんだ。



おとうさんおかあさん、日本人に産んでくれてありがとう。 
これで堂々と故郷に帰れます。 
私はすべてに満足し、仕事に戻った。 
もう何も思い残す事はない。 



ん?  



あれ?



何か違うぞ、、、? いったい私は何をしようとしてたんだっけ? 



えーっと、、、、



ああ、そうだ。
彼女に宿題を出してたんだ。 
アメリカ育ちのイギリス娘。
彼女の5歳の娘はあの形をうんちとして認識するのか? 
これでうんちと答えたらうんち=DNAの理論は50%で可能性が残るかもしれない。


私はもう一度彼女のもとに向かう。


敗北感に打ちひしがれた彼女はまだ立ち直れないでいる。 


そんな事はかまわない。


私のノーベル賞がかかっているんだ。 


彼女の娘の出した答え。 


それは、、、






















































わずかな希望も閉ざされた。 
この世に神はいないのか?  






















まきぐそや

ああまきぐそや

まきぐそや

ひとりまきまき

ただ臭うのみ 

(辞世の句)



























いったいこの国の連中は、いつどうやってあの形をうんちと認識する様になるのか?
小学校に入ってか?
中学か?
それとも18歳の誕生日の朝、目覚めた瞬間悟るのか? 
私のまきぐそ探求はまだまだ終わりそうにない、、、、、、


























つづく、、、かも

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